研究の方向性
「持続可能な社会の創成に向けた交通システムの実現」
⽇々の⽣活の中での家族や友達との「つながり」,まちや⼤学との「つながり」,社会・経済活動との「つながり」.これらの「つながり」を根底で⽀えているのが「交通」です.本研究室では,個々⼈の意思決定の集積である「交通」を適切に「マネジメント」することで, 都市の活⼒を⾼めるための⽅策について研究しています.
主な研究テーマ
過去の卒業論文・修士論文もご覧ください。
■ 高速道路における動的交通流マネジメントに関する研究
高速道路をより安全・円滑にするためのマネジメント手法について研究を進めています.運転挙動の分析・モデル化,交通シミュレーションの開発,最適な情報提供手法の提案などに取り組んでいます.具体的には…
- 動的な車線マネジメントに関する研究
中国道の宝塚TNで発生する渋滞対策として,動的に走行車線の利用を誘導することで,相当程度の渋滞発生を回避できることを試算により明らかにしました.- 塩見康博,谷口知己,宇野伸宏,嶋本寛:個別車両データを用いた単路部ボトルネックにおける速度変動予測と車線変更誘導による渋滞抑止効果の検証,高速道路と自動車,Vol.56, No.3, pp.30-40, 2013. - 多車線マクロ交通流モデルの開発
車線別の動的課金/割引など,車線レベルの交通運用の効果をネットワークレベルで評価するためのモデルを開発しています.これを用いて,多彩な施策を最適なタイミングで実施する方策を検討します.- 塩見康博,小園達也:車線交通量の均衡状態を仮定した高速道路サグ部の車線利用特性の分析,交通工学論文集(特集号),Vol.1, No.2, pp.A_158-A_164, 2015.- 塩見康博,谷口知己,宇野伸宏:車線交通量の均衡メカニズムを内生化した多車線交通流モデルの構築,交通工学論文集,Vol.1, No.3, pp.1-10, 2015.
■ 多様な観測ツール・データソースを用いた交通モニタリング手法に関する研究
スマートフォンから得られる情報や,既存の感知器から得られるデータを用い,リアルタイムで交通状況を把握する手法を開発しています.東南アジアをフィールドにした研究も継続して実施しています.具体的には…
- Bluetoothセンサーを用いた交通状態モニタリング手法の開発
スマートフォンや車載器に使われているBluetoothセンサーのMACアドレス情報を収集することで,旅行時間や速度などを計測する手法を開発しました.- 北澤俊彦,塩見康博,田名部淳,菅芳樹,萩原武司:Bluetooth通信を用いた旅行時間計測に関する基礎的分析,土木学会論文集D3,Vol.70, No.5, pp.501-A_508, 2014. - スマートフォンを用いた車種判別,および車種別交通状態推定
オートバイの多い東南アジア諸国を対象に,広く普及しているスマートフォンから取得できるデータを用いて,車種別に交通状態を推定し,モニタリングする手法を開発します.- 塩見康博,西内裕晶,吉井稔雄:スマートフォンの所持形態を考慮した二輪車・四輪車の車種判別に関する研究,第12回ITSシンポジウム Peer-Review Proceedings, 2014.
■ 交通安全・事故リスク研究
草津市における自転車事故発生地点の分布交通事故のない安全・安心な社会を築くために,多様なデータを統合的に用いた事故リスク評価や,交通事故の要因分析,および交通安全のための効果的な対策案の検討などに取り組んでいます.具体的には…
- データ同化による交通事故発生予兆検知に関する研究
拡張カルマンフィルタにより交通流特性に関する内生変数の変動をモニタリングすることで,動的に取得される交通流データから追突事故が発生する予兆をとらえる可能性を示しました.- 藤井大地,塩見康博,宇野伸宏,嶋本寛,中村俊之:フィードバック型交通状態推定手法の事故発生状況分析への適用可能性,土木学会論文集D3 Vol.70, No.5, pp.1067-1076, 2014. - 地域性を考慮した交通事故発生要因分析
交通事故データと道路構造のデータ,周辺土地利用のデータを融合的に用い,統計分析により事故発生に影響を与える要因を特定します.- 塩見康博,渡部数樹,中村英樹,赤羽弘和:交差点幾何構造を考慮した交通事故リスク要因の分析,第51回土木計画学研究発表会講演集CD-ROM, 2015.
■ その他
交通計画や交通政策の立案に必要な交通行動の分析,円滑かつ安全な交通サービスを実現するための交差点設計・運用・制御に関わる研究,災害に対しても頑健な道路ネットワークデザインに関する研究や公共交通のサービス水準の改善に資する研究など,「交通」をキーワードにより良い社会を創造するための研究を進めています.
- ラウンドアバウトの交通容量に関する研究
日本でも普及が進みつつあるラウンドアバウトにおいて,ドライバーが環道に進入する挙動について分析を行い,交通容量を増加させる方策について検討を行いました.- 塩見康博,今仲弘人:車両走行軌跡データに基づくラウンドアバウト環道流入挙動の分析,土木学会論文集D3 Vol.71, No.5, 2015(掲載予定). - 近畿圏パーソントリップデータに基づく長期交通需要の推定
パーソントリップデータや土地利用・社会経済に関する経年データを用い,将来の交通需要を推定する手法について研究を進めています.- 安井さや香,塩見康博:京阪神都市圏における都市類型と自動車利用に関する経年分析,交通科学,Vol.45, No.2, pp.107-108, 201, 2014.